<文化と遺産>


現王朝の威厳を示すような絢爛豪華たる王宮や、寺院が集まるバンコク。ユネスコの世界文化遺産に登録された「水の都」アユタヤ。タイ人のルーツを築いた古(いにしえ)の王朝スコータイ。多様な民族が交差し様々な文化が混在するチェンマイ。東北部のクメール時代の遺跡や、東南アジア最古の農耕文明のものとされているバーン・チアン遺跡など、タイの文化遺産は実に多彩で個性的だ。

また、古代から現代に至る貴重な仏教文化の多くは今もなお、タイの人々の精神的な支柱となっている。<微笑みの国>タイは今もなお、悠悠の時の流れと共に歴史を築き上げている。      





近代文化と伝統が調和した南国の楽園都市
●バンコク

バンコクは王朝の栄華を現代に伝える歴史的建造物の宝庫だ


近代化が進むタイ王国の首都、バンコク。ビジネス街やファッショナブルなショッピングセンター、高級ホテルとともに王宮をはじめ、国を代表する歴史的建造物、博物館、史跡が立ち並ぶ。人々の熱気と静寂な寺院の佇まいが独特のエキゾチズムを醸し出し、歴史と伝統のなかに現代が調和するタイ最大の観光地だ。
                 
チャオプラヤ川東岸のラタナゴーシン地区は、現王室チャクリ朝が築かれた所。王宮のほか、タイを代表する重要な寺院が集まり、同国の仏教文化の神髄を見ることが出来る。また、プラトゥナム市場やチャイナタウンのパフラート市場などを訪れ、チャオプラヤ川と共に歩んできたバンコク市民の息吹に触れるのもタイならではだ。



王朝の栄華を偲ばせる「水の都」
●アユタヤ

かつての王朝の栄華を偲ばせる仏教遺跡


アユタヤは12世紀半ばに勃興し、その後400年以上の間<シャム>の名で欧州や日本と貿易を行っていた。17世紀には日本人居留区ができるなど、日本とも縁のある町で、1991年、ユネスコの世界文化遺産に登録された。

残存する遺跡の大半は、18世紀のビルマ軍の襲撃による戦火を逃れたもので、現在は整備されて、かつての面影を現代に伝えている。また、アユタヤから20km南にあるバーン・パイン離宮は現王朝により改装され、王の夏の離宮として利用されていた。バンコクとアユタヤを結ぶクルーズ船を使い、行き帰りのどちらかに立ち寄ることも可能である。

                   


現王朝の基盤を築いた13世紀の王朝遺跡
●スコータイ

タイの仏教文化の基礎を築いた遺跡が残る


スコータイ王朝は13〜15世紀に栄えた、タイ族による初の王朝。歴代の王が仏教を基盤に国作りを行い、これが現在に至るタイ人の仏教観の基となったとされている。

王朝の遺跡はつい最近まで森の中に放置されていたが、タイ文部省とユネスコの協力でスコータイ遺跡公園として甦った。ここではクメール、セイロン、インドなどの影響を受けつつ、独自様式を生み出したスコータイ文化に触れることができる。

         


豊かな自然と激動の歴史に培われた北部タイの都
●チェンマイ

チェンマイには格式の高い印象的な寺院が多い


13世紀、ランナー王国の首都として栄えた歴史を持つ古都で、現在はタイ北部の中心都市。市内には300を超す個性的な寺院が点在する。また、ビルマ、ラオスと国境を接し、様々な少数民族が多いことから多様な文化が交錯する独特の個性を築いている。

チェンマイでは寺院巡りや、周囲の豊かな自然を満喫したり、独特の工芸品ショッピング、少数民族の文化に触れるといった多彩な楽しみ方ができる。少数民族の村へはトレッキングをしながら訪問する方法が一般的だが、十分に時間がない場合は市街に近いモン族の村や民族博物館を訪ねてもよい。 

     


のどかな田園にクメールの遺跡を訪ねる
「タイのアンコールワット」と呼ばれピーマイ遺跡


メコン川の恩恵を受けながら暮らす素朴な人々に出会える地、タイ東北部イサーン地方だ。その玄関口となる町がナコンラチャシマだ。通称コラートとも呼ばれ、バンコクに次ぐタイ第二の都市である。

タイのアンコールワットと呼ばれるピマーイ遺跡やパノム・ルン遺跡など、周辺にはクメール文明の遺跡が多い。また、イサーン地方にはユネスコの世界文化遺産に登録された先史時代のバーン・チアン遺跡、貴重な古代壁画のプー・プラバート歴史公園などあり、タイの新しい一面を伝える素材として期待される。